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特集 TPP問題
★大詰めをむかえるTPP交渉。公共性に鑑み、3月末まで動画・テキスト全編特別公開中!
「アメリカでは、200名近い民主党議員たちが、TPA(大統領に強い通商権限を与える法案)を通さないという書簡をオバマ大統領に送った。オーストラリアでは、草案開示を上院で決議した。チリ、ニュージーランドも同様な動きだ」──。
2014年2月14日、東京都千代田区の衆議院第一議員会館で、「TPPの情報開示を求める国会議員と市民の記者会見」が開かれた。これは、「TPP交渉のテキスト公開を求める国際共同書簡」に賛同した国会議員と、市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会との共同会見である。
出席した国会議員は、衆議院議員の篠原孝氏、鈴木克昌氏、阿部知子氏、福田昭夫氏、鈴木貴子氏、参議院議員の徳永エリ氏、紙智子氏、福島瑞穂氏、山本太郎氏(亀井静香衆議院議員は欠席)。市民側は、市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会の谷山博史氏、国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会事務局長の坂口正明氏、西濃環境NPOネットワーク副会長の神田浩史氏らが報告をした。
- 記事目次
- 急に言われはじめた「大筋合意」
- ISD条項のために、法律ひとつ作れない韓国
- 国会の中では、自民党も含め賛同者は多い
- TPPがなくなっても「国家戦略特区」が肩代わり
- 市民にTPPの是非を議論させないことが、最大の問題
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■フル動画
急に言われはじめた「大筋合意」
TPP阻止国民会議メンバー・TPPを慎重に考える会事務局長の、徳永エリ参議院議員が会見の口火を切った。「昨年、TPPシンガポール会合が不調に終わり、越年した。このままでいくとドーハ・ラウンド化(消滅)する期待もあるが、25日には閣僚会合があり、予断を許さない。いまだ、国民にもTPPの真意が伝わっていない。今回、草案の開示を求めて、国際共同書簡を12ヵ国の関係閣僚に送ることになった」。
続いて、TPPを慎重に考える会会長の篠原孝衆議院議員が、次のように語った。「やましいものほど、隠したがる。これほどまでに交渉内容を秘密にしたことは、前代未聞。内容がわからないまま、批准しろというのは無理な話だ。最近は、TPPの情報がないので、報道もなくなり、出版物も売れなくなった。また、特定秘密保護法が可決されたが、『TPPが特定秘密にあたるかどうか』という問いへの、森雅子担当大臣の答弁も二転三転している」。
「アメリカでは、昨年、200名近い民主党議員たちが、TPA(大統領に強い通商権限を与える法案)を通さないという書簡をオバマ大統領に送った。オーストラリアでは草案開示を上院で決議した。チリ、ニュージーランドも同様な動きだ。そんな中、『大筋合意』という言葉が急に出てきた。これは、まとまってもいないものを、合意したように見せかける動きだ」。
【関連記事】
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「TPPの状況について、予算委員会で甘利明担当大臣に質問した。大臣は『米連邦上院議会では、リード院内総務が反対している』と発言。また、アメリカでは医薬品業界を筆頭に、「妥協するなら、ない方がマシ」という意見も出ている」。
篠原議員は「推測だが、アメリカは『日本が強硬に抵抗したから』という言い訳を使って、米議会の中間選挙(11月)までTPPを放置するつもりではないか。日本も『強硬姿勢を貫いた』と言い訳ができる」と述べ、「とにかく、草案を検討して議論すべき、ということで、7ヵ国(オーストラリア、カナダ、日本、マレ-シア、メキシコ、ニュ-ジ-ランド、ペル-。アメリカとチリは単独実施)が連携して、公開を求める書簡を共同提出することになった」と説明した。
ISD条項のために、法律ひとつ作れない韓国
鈴木克昌衆議院議員は「一番懸念するのは、ISD条項。今、アメリカと共に自爆する瀬戸際だ」と主張。阿部知子衆議院議員は「特定秘密保護法案を強行採決した理由は、TPPのためだと思っていたが、現在、TPP交渉は暗礁に乗り上げている。韓国では、米韓FTAのISD条項があるがために、法律ひとつ作れなくなっている」と述べた。
福田昭夫衆議院議員は「アメリカは、1%の富裕層が、99%の富を独占する格差社会になってしまった。国民の知る権利や国会議員の国政調査権すら奪うような、こんな秘密協定はやめさせる」と話し、鈴木貴子衆議院議員は「今回の情報開示の取り組みは、政治家の信念が問われるものだ。私は国会議員になって8ヵ月だが、国民にちゃんとした情報を伝えていく」と、それぞれの決意を語った。
紙智子参議院議員は「国民に関わることを、国会議員ですら中身がわからないで決める異常さ」を訴え、福島みずほ参議院議員は「TPP交渉に入ったら、秘密協定で一切の情報が出てこない。アメリカ国内でも反対意見が強い。さまざまな形でTPP参加を止めていこう」と呼びかけた。
山本太郎参議院議員は「国と国の取り決めなのに、(ステークホルダーの)600企業以外は、国会議員も内容を知ることができない。政治も、企業にコントロールされているということ。メディアは、少しでも国民が気づけるようにしてほしい」と話した。
国会の中では、自民党も含め賛同者は多い
そして、亀井静香衆議院議員も賛同署名をしたことが報告されて、質疑応答に移った。
篠原議員は、現時点で賛同している議員の数と時期について問われると、「今回、提出に間に合わせるため、すぐ連絡がついた議員だけになったが、自民党議員も含め、他にも賛同者はたくさんいる。シンガポール会合の前までに提出する」と述べた。また、日米2国間協議について、「TPPと並行して進めているが、TPPが消滅したら、2国間協議もなくなるというわけではないらしい」などと答えた。
「遺伝子組み換え食品の表示に関して、森雅子担当大臣はじめ消費者庁は、どうとらえているのか」との質問が出ると、篠原議員は「森雅子担当大臣らは、国の方針しか答えない。安倍首相に、『国防軍で国を守るというが、食の安全や環境問題で国を守らないのはおかしい』と追求すると、『両方を絶対に守るように指示してある』と答えた」と述べた。
TPPがなくなっても「国家戦略特区」が肩代わり
IWJの佐々木記者が「他国の情報開示の実態はどうか。また、国家戦略特区構想は、TPPの内国化ではないか」と質問した。これに対し、山田正彦元議員が他国の情報開示について、「マレーシアでは、担当大臣が閣議の前に、市民団体や野党などに経緯を説明している。アメリカは、昨年9月、閲覧だけだが、国会議員がTPPのテキストにアクセスできるようになった。その結果、200名近い議員たちが内容に驚いて、反対署名に立ち上がった。日本では、篠原議員が、内閣官房にアメリカの例を挙げて問い合わせたが、『よその国ことだから』と素っ気なく断られた」と話した。
紙議員は「安倍内閣の押し進める国家戦略特区は、まさに、TPPも頭に入れての政策だ。(アベノミクス3本目の矢とされる)日本再興戦略の中でも、その意図が明らかになっている」とした。福島みずほ議員も「国家戦略特区は、TPPの国内版で、成功すれば全国に広がっていき、ここから制度が壊れていく。もし、TPPが決まれば、さらに本格的になる」と述べた。
山本議員は「内閣委員会に所属しているのだが、国家戦略特区に反対しているのは、自分と共産党議員の2名だけ。もし、TPPがダメになっても、この特区で、最大限の規制緩和を準備している。しかも外枠だけ決めて、細かいところはあとで都合良く決めていこうとしている」と答えた。
【関連記事】
・【IWJブログ】暴走する安倍政権が「国家戦略特区」で国民の「生活」を打ち砕く
市民にTPPの是非を議論させないことが、最大の問題
市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会の谷山博史氏が話した。「情報公開を求める市民と議員の共同運動で、かつ、今回の書簡は、世界との共同運動でもある。情報公開にこだわる理由は、見えない不安と、解決策がまったくないこと。政府の交渉担当官は『国際交渉に秘密はつきもの。そうでなかったら、交渉が成り立たない』と言うが、こんな権威主義が当たり前になってしまった」と警鐘を鳴らした
続けて、「これは、国益を守るためだけではない。途上国は、日本以上に影響を受けるだろう。命と暮らしと環境を守るための規制ができなくなる。2013年3月、TPP正式参加表明後、それまで行なってきたオープンな意見交換会はできなくなった」と述べた。
「そのため、昨年8月、草案の情報公開、市民協議の開催、パブコメを求める要請書を、380団体の署名で政府に提出したが、事態は変わらなかった。秋からは、オンライン署名のキャンペーンを始めた。現在、106団体、1921人の署名がある」と続け、取材に来ているメディアに「広く報道してほしい」と要望した。
次に、国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会の坂口正明事務局長がスピーチをした。「政府が、国民を分断しようとするのを予測し、その先回りをして、TPPについて、わからないなりにも、わかることを知らせる運動をしている。この条約の是非を議論させないことが、最大の問題だ。署名運動も10万人を超えている」。
「TPPは、グローバルな食糧事情の格差を生む」と言明するのは、西濃環境NPOネットワーク副会長の神田浩史氏。「自分は、パブリックコメントにこだわっている。今回、国家戦略特区に関するパブコメの募集期間は15日間だけだった。行政手続法にのっとっていない」と訴えた。【IWJテキストスタッフ・関根/奥松】
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