
「東京を世界一の都市にする」という舛添都知事の掛け声のもと、外国企業誘致を推進し、グローバルビジネス都市の実現を目指す東京都が主催する「Invest Tokyoセミナー」が、4月21日、東京都中央区の時事通信ホールで行われた。
3月28日、政府が国家戦略特区の一つに「東京圏」を指定したこと受け、東京都は知事本局に「国家戦略特区推進部」を設置。「外国の資金や企業が集まる世界一の成長センター」となることを目指している。
今回のセミナーは、東京都が国家戦略特区に指定されてから、初の海外企業向けの説明会となる。日本に拠点を構える外資系企業をはじめ、各国在日大使館や商工会議所の関係者など、150名が会場に集まった。
舛添都知事はセミナー冒頭で、国家戦略特区への指定を機に、「東京をさらに魅力的なビジネスイノベーション都市にする」とあいさつ。国際的なビジネス環境の整備を通じて、外国企業の東京誘致に力を注ぐ決意を表明した。
- 国家戦略特区で、外国企業への優遇はさらに進む
- 特区政策は東京都の税収増につながるのか
- 企業と行政の隔たりは、いまだに大きい
- 舛添要一東京都知事挨拶/特区進出支援企業によるトークセッション/外国企業向けの東京都の支援内容の紹介、等
国家戦略特区で、外国企業への優遇はさらに進む
東京都の外国企業誘致の取り組みは、2011年12月以来、新宿や臨海地域などの外国企業を対象にした「アジアヘッドクォーター特区」によって進められている。
特区政策は、法人税の減税や英語によるビジネスサポートなどが中心である。また、統括拠点を設置予定の外国企業向けに、初期投資コストを助成する補助金制度や、アクセンチュアによる無料コンサルティングの提供などの支援を行っている。
セッションに登壇した東京都国家戦略特区推進部の安達紀子担当課長は、「昨年度は目標の10社を超える11社の外国企業誘致に成功した」と、都の成果を報告。今後は国家戦略特区の政策と組み合わせることで、「さらに多くの外国企業の東京進出を促したい」と、会場に集まった企業関係者に向けてアピールした。
一方で、外国企業の進出や外国人労働者の雇用に関する規制緩和には、市区町村の反発も強い。国家戦略特区も、東京都では千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、江東区、品川区、大田区、渋谷区の9区のみが特区の範囲となる予定で、都内全域での導入は見送られた格好だ。
特区政策は東京都の税収増につながるのか
新たに東京に進出する外国企業を支援対象とした今回の特区政策。しかし、これによって、すでにシンガポールや香港などにアジアの拠点を構える企業が、東京に拠点を移すことになるのだろうか。
この点について、安達氏は、「アジアに統括拠点を構えている企業が、東京にそっくり拠点を移すことは難しいだろう」との見通しを示した。そのうえで、「東京を『アジア第2の拠点』として設置する企業も支援する」との方針を明らかにした。
特区政策による助成は、2ヶ国以上の国を統括する本部を東京に置くことが条件になっている。しかし、各拠点のランニングコストや指揮系統などを考えると、アジア圏を分割する複数の統括拠点を置くという企業は、それほど多くはないだろう。統括拠点の移転が伴わずして、東京へ進出する海外企業は増えるだろうか。
さらには、地域統括本部でなくとも、「人事や経理などの機能に特化した拠点であっても、支援対象となる」と説明。収益部門ではない「コストセンター」であっても支援の対象となる可能性を明らかにした。
自治体が外国企業による投資を誘致する主目的は、その地域で収益が生まれることによる税収の増加であろう。コストセンター機能のみの誘致によって、はたして自治体に税収増がもたらされるのだろうか。
そもそも、人件費の安いアジア各都市と比べて、東京にコストセンターとしての優位性があると考えるのは難しい。企業にとって、東京にそのような拠点を設置するメリットは少ないだろう。
当然のことながら、東京都の税制優遇や助成金の原資は、都民の税金である。税金を使って収益が落ちないのであれば、何のための特区戦略なのだろうか。
(取材:IWJ 松井信篤、記事:IWJ野村佳男)
企業と行政の隔たりは、いまだに大きい
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